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2004/7/23 ジャスティス 第三十七話 「もうひとつの剣」
金髪の少女が近づいてくる マナだ
彼女は俺のそばまで来て できるだけ肉塊を踏まないように足元を気にしながら 俺の腕を取った 「と とにかく・・・ ここは雨に濡れますから 移動しましょう」 そう言って俺の腕を引っ張る ・・・まて 俺はここに何をしに来たんだったか そうだ 親友を探しに来たんだ まだ俺は何もしていない ここを離れるわけにはいかない 「す すぐそこの建物ですから まずは落ち着きましょう ね?」 俺の意図を察したかのように 彼女はそう付け加えた 俺は腕を引っ張られながら 考えていた 考えようとしていた だが まるで頭の中がミキサーに掛けられたようにぐるぐるとしており 何も 考えられなかった そして建物の中 俺はまた彼女に体を拭かれていた 適当な椅子に座り 俺は無言でうなだれ 彼女がそれを介抱している 部屋の中は暗い 外から来るわずかな日差しのみが唯一の明かりだった 雨の音が うるさい 「・・・また ずぶ濡れになっちゃいましたね」 彼女が服の上からタオルで水分をふき取る さすがに今回は服を剥かれていなかった 上着は持っていかれたが 「恭治さん・・・どこまで追いかけにいったんでしょうね」 そうだ 恭治 俺の親友 どこに行ったのだろう せっかく会えたと思ったのに 恭治が追いかけに行ったといわれる方向からしてこっちに間違いないはずだった だがここは袋小路だ 途中に分かれ道も何もない 故に俺も迷わずここにたどり着けたんだが ここから先に行ったとすれば塀をよじ登って行ったのだろうか? いや 建物の中に入ったということも考えられる だが 袋小路から建物に入ったとして 外で戦闘をしている俺たちに気づかないはずはない キョウジガタテモノノナカデ ナニカニコロサレテイナケレバ やはり・・・塀を乗り越えたのか それしかないな ああそうだそれしかあるまい 少し 落ち着いてきた気がする 「雨も止まないですし・・・ 恭治さん風邪ひかないといいんですけど」 俺に話しかけているのか それとも独り言か マナは俺の体を拭きながらぶつぶつとそんなことを言っている ・・・結局 マナは俺の体を拭き終わっても 俺のさっきの戦いぶりについて 何も聞かなかった だから 俺も何も言わなかった もっとも 聞かれても俺には答えようがなかったが 「・・・すまないな 俺もようやく落ち着いた そろそろ行こう」 俺はそう言って立ち上がり 近くの机にかけてあったまだ少し湿っている上着を羽織った 「え?で でも・・・」 「待っていて雨が上がるとも限らないし また化物がくるかもしれない 早くあいつを追っかけたほうがいい」 「は・・・はい・・・」 マナもしぶしぶといった感じで立ち上がる そうして 俺たちは建物を後にした 表に出る 小雨だが雨はまだ降り続いている ・・・そういえば 落としたままだったな 「・・・あれ? どうしたんですか?」 化物の死体に向かって歩き出そうとしている俺に マナが声をかける 「ああ・・・ 武器くらいはやはり要るだろう」 俺のその言葉にマナはハッと気づいたのか そうですねと言いつつ吹き飛ばされたひょうしに落とした拳銃を取りに行った ・・・そういえば あいつ見かけによらず頑丈だよな 化物に吹き飛ばされたというのに もうケロリとしている ・・・・・・・・・・・ 気のせいだろうか? 俺もついさっきまで体の節々が痛かったはずなのに もうあまり痛みを感じなくなってきている 慣れたのだろうか ・・・いや 左腕も指ぐらいしか動かなかったはずなのに もう腕を動かせる程度まで回復している ・ ・ ・ ・ ・ ・・・わからないことをいくら考えても答えなどでるはずもないか 思考はその辺で止めておき 俺は肉塊に歩み寄り 落ちていた日本刀を 手に取った 「・・・・・ん?」 ふと気づく 化物の死体の真ん中に 何かあった 化物の血で真っ赤に塗りたくられた 赤い棒状の物体 意を決して拾い上げてみる・・・と 左腕に持った刀と同じ感触がした 雨が 少しずつ血を洗い落としていく 死体の真ん中でたたずむ俺をいぶかしげに思ったのか マナが近づいてくる頃には 血はもう 全て洗い流されていた 赤いものは全て流れ落ち 手に残ったのは 一振りの 刀だった つづく
2004/7/21 ジャスティス 第三十六話 「妖刀」
「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
剣を握った瞬間 全てがわからなくなった 思考が喰われる そんな感覚 俺がなんとかしなければ 金髪の少女は死ぬ 化物がこちらを向く 赤く光る目 獲物に狙いを定める目 どうすればいい? なんとかすればいい 元凶は目の前の怪物 少なくとも今この場においては なんとかする・・・つまり 殺せばいい 斬ればいい 目の前の怪物を 切り裂き 叩き潰し 蹂躙し 引き裂き 切り刻めばいい ───なんだ 簡単じゃないか 化物がこちらに向き直った 爪を振りかざし 突進してくる俺に向かって爪を横なぎに振るう 俺の喉笛を あわよくば顔面を引き裂いてしまおうとする攻撃だ だが遅い 化物の手が振るわれる前に 俺は目の前の空間を“斬った” 剣が横一文字に振るわれ 空気が裂ける そこに出来たのは 道 俺が切り裂き 空気そのものが無くなった真空の道 風の抵抗を無にした俺は もう化物の胸元まで来ていた 化物の手はまだ振るわれていない それどころかヤツの目は俺を見ていなかった まだ 一瞬前に俺がいた場所を見つめたままだ 遅い 遅すぎる なんて愚鈍 絶対的な立場にずっといたせいか 目の前の状況について来れていないとは ・・・期待はずれだったな 力量の違うものを相手にするのは初めてなのだろう 授業料を払わせるつもりは無い 代わりに命をおいていってもらう ・・・はて?何故俺はこいつの命をもらおうとしているのだったか? こいつに追い詰められていたのではなかったか? 少女の命を助けるためにこいつを殺すのだったか? ・・・追い詰められる? こいつに? この俺が? いまだに俺の残像を見つめ 爪を振るおうとしている愚かなこいつに? ・・・冗談 まぁいい 殺してから考えよう 「死ね」 剣を振った 化物の首の真下を剣が音も無く通過する 吹き飛ぶ首 血はまだ吹き出ない 脳が出した最後の命令を成し遂げようと 化物の手がまだ動こうとする 返す刀 ヤツの右腕も吹き飛んだ 死んだ 正確にはまだ死んでいないかもしれないがそれもあと数ミリ秒のことだ ・・・飽きたらない 首と右腕をなくした化物はまだ立っている 面倒くさい 今すぐこいつを消し去りたい 俺はそのまま唐竹割りの要領で 首の無い死体を真っ二つに切り裂いた そうしてようやく ヤツの体は両脇に倒れ 俺の視界からヤツの姿は無くなった 倒れる直前 ヤツの右肩が少し動いた 今になってようやく 化物の爪は振るわれたのだ 遅い 遅すぎる 話にならない 視界が開かれ その奥に金髪の少女がいた 目の前の攻防・・・いや 一方的な殺戮についていけず目を丸くしている ・・・なんだ こいつもか 遅いやつは嫌いだ 弱いやつも嫌いだ こいつもついでにぶった斬って─── 「智・・・さん?」 目の前の金髪の肉が喋った ・・・智? ・・・? ? ? ? ? ? ? ? え・・・ 智・・・ 俺の 名前・・・ ・・・俺は 今 何をした・・・・・・・・? カランと音がして びっくりして我に返った 下を見る・・・ 手にもっていた剣が落ちて・・・!!!! 「うっ・・・!!!」 思わず口を押さえる よくわからない何かを吐きそうになるのをなんとか堪える 気が付けば 俺は よくわからない肉の山に突っ立っていた つづく |
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